ヤマト運賃値上げ、高い再配達率、「アマゾンリスク」。その根本的問題とは?
【宅配・物流崩壊】を物流コンサルタント・角井亮一氏が徹底解説1/3
●ヤマト運輸、運賃値上げ検討のワケ
トオル…僕はよくアマゾンで買い物をしているんだけど、正直一度で受け取れたためしがないんだよなあ。仕事でなかなか家にいられなくて……。
シズカ…私もそうだわ。配達員の方には申し訳ないと思っているんだけど。最近「ヤマト運輸」の運賃値上げがニュースになったけど、これも「再配達」が多いことと関連があるのかしら。「ヤマト運輸」はアマゾンが大きな取引先って聞いたわ。
トオル…ネット通販をよく利用している僕からすると、今回の騒動は他人事じゃないな。今後の宅配業界の動きについて、流通コンサルタントの角井亮一さんに聞いてみよう! ちょうど、こないだ角井さんの著書『アマゾンと物流大戦争』(NHK新書)を読んだんだ。海外の流通の事情も詳しく書いてあって勉強になりました。角井さん、ヤマト運輸の運賃値上げはそもそも何がきっかけになったんですか?
角井…ずばり労働環境を改善するためですね。ネット通販が急拡大し、配達員の労働時間も増加しています。こういった状況を受け、労働組合が会社側に時間短縮を要望。一人あたりの労働時間を減らしながら、増え続ける配送需要に対応するには人員や人件費が必要になる。そこで値上げに踏み切ったということなんですよ。
シズカ…ヤマト運輸といえば、時間帯指定の見直しについてもニュースになっていましたよね? 正午から2時までの時間帯は廃止するらしいけど、この狙いはどこにあるのかしら。
角井…配達員のお昼休みをきちんと確保するためでもあります。そもそも、お昼の時間帯は昼食休憩があるため、ドライバーが手薄でもありますから。時間帯指定の見直しの中で「20時~21時」の時間帯を「19時~21時」に前の時間を伸ばすんですよ。
トオル…この20時の~時間帯って仕事帰りに受け取れるから便利なんだよね。
角井…特にサラリーマンの帰宅時間と重なり、希望も集中します。しかも他の時間帯よりも短いため配達員の負担は必然的に大きくなる。もし時間を伸ばせば配達員の負担は軽減できますよね。また、早めに配達が終われば、配達後の事務作業にも早く取り掛かれますから、帰宅時間も早くなります。
シズカ…一連のヤマト運輸の対応だけど、角井さんはどう評価していますか?
角井…ヤマト運輸さんの動きはおおむねプラスに評価しています。日々、雨でも雪でも頑張って配達している配達員さんの負担を減らすには致し方ない部分でもありますから。
トオル…本当に毎日、大きな荷物を配達員さんが運ばれているのを目にします。今後は労働環境が改善されていく見込はありますか?
角井…改善はされていくでしょうが、改革にはまだ足りません。根本的な問題を解決していないからです。なかでも一番大きな問題が、やはり再配達。実は、配達している荷物のうち約20%が再配達と言われています。20%といっても、実際の労働負荷は、体感値で30~35%くらいだそうです。
シズカ…ん? その差はなぜかしら?
角井…例えば、午前中に行って不在だったとき、その日のお昼過ぎや夜に再配達することもあるんです。
トオル…え!? 再配達って次の日じゃないんだ! あっこれは受取人が連絡をして……というわけではなく、配達員さんの方でもう一度来てくれる場合があるということだね。
角井…当然再配達は生産性を落とす大きな原因ですから、早く改善しなければいけません。
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